前回からこちらのブログを「マインドフルネストレーナー養成講座アドバンスコース」の卒業生でリレー形式にお届けしています。
今回は、アドバンス1期卒業生の中村慎太郎さんに、ビジネスパーソンとマインドフルネスについて書いてもらいました。
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現在わたしは、企業向けにワークショップや研修をしたり、個人向けにコーチングをしたりという事を生業としています。
一言で言うと、「関わる人の職業人生を豊かにする」お手伝いをしているのですが、元々はリクルートのHR事業領域で、20年以上営業マンをしていました。
そのようなバックグラウンドであるが故に、よく聞かれるのが、「なんで経験の無い領域で独立したの?」です。
細かい理由を並べれば、数えきれない程出てくるわけですが、大きな理由の一つが、ビジネスパーソンにとってスキルよりも在り方が重要であり、その在り方をビジネスのリアルな現場で学べる機会や、気付かせてもらえる機会が、あまりにも少なかったからです。
日々目の前の仕事に追われ、当月や四半期の目標、長くても当期の目標を達成する事に自分が持てるリソースの全てを注ぎ続けるような働き方は、日本においてまだまだ全盛と言えるでしょう。
そのような環境では、研修をやると言ってもその多くがスキル偏重です。
しかし、どれだけ素晴らしいスキルを与えられたとしても、それを使う人の在り方次第では、プラスにもマイナスに転じ得ます。
ビジネスの世界でも割と最近の話ですが、某大手保険会社が自分若しくは、自組織の目標達成を優先するあまりに、顧客に対して不合理な契約を強いていた、という問題がありました。
まさに、在り方によって、その事業価値や目的が歪められたケースではないでしょうか。
これって、働いている人も不幸ですし、会社も不幸。
もちろん、お客さまはもっと不幸ですよね。
たぶん働いている人たちも違和感がありながらも、そこから脱却しきれないでいた自分自身に葛藤していたと思います。
だからこそ、私は在り方を醸成する事がビジネスパーソンにとって大切であり、在り方を醸成する機会を提供したいと思い独立をしたのです。
前置きがかなり長くなりましたが、この在り方の醸成においてマインドフルネスは有効な手段の一つであると感じています。
その理由は3つです。
1)不要な思い込みに気付く
上司に意見をしたら評価が落ちる、会議では多数派に従わなくてはならない、失敗したら取り返すのは難しい、自分はマネージャーなので部下に相談するべきではない、自分が独りしても成功するわけがないなど、ビジネスパーソンに限らず、私たちは多くの不要な思い込みに囚われています。
多くの人は、不要な思い込みを持っている事で機会損失をしている可能性があります。
その不要な思い込みに気付くことで、心のブレーキを取り外し新たなステージに進むことが可能になるのです。
2)行動パターンに気付く
私たちは、1日に9000回もの選択をしていると言われています。
そのうち実に90%を無意識下で行っているのです。
こんな経験はありませんか?
家を出て駅まで歩いている途中で、「あれ!?、エアコンのスイッチ切ったっけ??」。
すぐに引き返すにしても、用事を済ませてから帰ったにしても、家に帰ったらどうでしたか?殆どの場合が、消えていたのではないでしょうか。
これは、私たちが普段の生活のみならず、ビジネスのシーンにおいても、その活動の大半がオートメーション化されているという事です。
ちなみに、大塚商会が調査した結果によると、ビジネスパーソンが1年間で探し物に費やす時間は150時間だそうです。これも、何かをどこかにしまう作業自体がオートメーション化されている所以ではないでしょうか。
つまり、私たちはオートメーション化された行動パターンに気付く事で、違った選択肢を得る事が出来るのです。
3)今目の前にある事に気付く
私たちは、どんなに好きな物でも毎日食べ続けると飽きますし、どんなに辛い仕事でも日々熟しているうちに辛さが薄れて慣れてきます。
脳は初めての刺激に対しては大きな反応を示しますが、何回も繰り返しているうちに刺激に対する反応が活性化しなくなるのです。
これは、大きな刺激を繰り返すことで、脳が疲れてしまう事を回避するための、いわば防衛本能とも言えます。
会社の中にいてもそれは同じように起こります。
新入社員で入社したての頃や、転職直後などは、「あれ?この会社なんか変だよね・・」と感じていたことも、時がたつにつれてあたり前になって行きます。
そのようなあたり前の事が、私たちの目の前にはたくさんあるのです。
あたり前のようにいつも一緒にいるメンバーや、あたり前のように使えている会社の備品や経費。そして、あたり前にお付き合い頂いているクライアント。
今目の前にある全ては、果たして本当にあたり前なのでしょうか?
もしかしたら、明日には無くなってしまうかもしれないくらい儚いものかもしれません。
マインドフルネスとは、在り方の醸成に有効な手段の一つであると言いましたが、本当は、在り方を支える土台となるものなのかもしれませんね。
そしてそれは、気付く力とも言えるかもしれません。
働き方が変化してきている現在でも、まだまだ多くのビジネスパーソンが、自分の仕事をやらされ作業として機械的にこなしています。
少しだけ立ち止まって、今の自分に注意を向けてみる事で、本当の自分の在るべき姿に気付く。
それが、一人ひとりの幸せな働き方に繋がるのではないでしょうか。
中村慎太郎
株式会社CHANGE PLUS
http://changeplus.co.jp/